四国サマーフリンジvol.2 参加団体インタビュー①|稲葉香帆さん―劇団ど鍋と作品の魅力に迫る―
四国サマーフリンジvol.2参加団体インタビュー
稲葉香帆さん―劇団ど鍋と作品の魅力に迫る―
劇団ど鍋上演作品『見上げる魚と目が合うか?』

2025年7月5日(土) 18:00~ / 6日(日)11:00~
7月5日(土)~6日(日)に、愛媛県の「東温アートヴィレッジセンター」で開催される四国サマーフリンジvol.2にて上演されるプログラムの一つ「劇団ど鍋」による『見上げる魚と目が合うか?』。
本作は劇団温泉ドラゴンの作家である原田ゆうさんが2012年に第18回劇作家協会新人戯曲賞最優秀賞受賞した脚本を使用している。今回は愛媛の若手劇団である「劇団ど鍋」の稲葉香帆さんの演出で上演される。劇団のことやご自身のこと、今回の作品についてなどを伺った。インタビューから稲葉さんの飽くなき探求心と「劇団ど鍋」が目指す愛媛・四国の若手演劇団体の希望が見えてきた。
―――2023年6月に四国内の大学生を集めて旗揚げされたという「劇団ど鍋」ですが、改めて主宰の稲葉さんと劇団についておうかがいできればと思います。よろしくお願いします。
稲葉:はい、よろしくお願いします。
―――ではまず、「劇団ど鍋」という名前の由来について教えていただけますか?
稲葉:全国学生劇祭に参加するために4人ぐらいで東京に行っていた際に、夜更かししながら、次の学生演劇祭に向けて「劇団作ろうぜ」ってなったんですよ。その時に劇団の名前、何がいいかなって考えて。全員個性がバラバラだから「闇鍋」にしようぜってなったんですよ。でも他のところと被ってたら嫌だから、調べてみたら3件あったんです!でも「鍋」っていう要素は「何でもできるよ」って意味で残したかったんで最終「ど鍋」になりました。
―――なるほど、夜遅くまで皆さんでされてたてんでも「夜なべ」っていう部分もあったり?
稲葉:確かに、「夜なべ」にも被りますねー(笑)

―――劇団ど鍋の普段の活動や取り組みについて教えてください
稲葉:基本的は年1~2回ぐらいで舞台を作りたいというのがあって。それに加えて最近は短編映画をちょっと撮ったりしています。演劇だけじゃなくて、映像方面にも関心がある感じです。
―――短編映画っていうのは今どっかで公開していたりするんですか?
稲葉:今、編集している最中で、全然終わらないです(笑)もし完成したら、誰かの作品上映会に混ぜてもらうか、ユーチューブでの公開とかを考えています。
―――劇団としては、どんな毛色の作品を上演することが多いですか?
稲葉:ベースとして人と人の価値観の違いとかが、ちゃんと見える形。それに加えて、今の「学生」だったりとか、「20代」っていう年齢に価値があると思うので、そういう自分たちの概念や価値観を持って「人のすれ違い」とかをかけたらいいなっていう感じですね。
―――今劇団に居る皆さんは20代や学生さんが多いのですか?
稲葉:今、2人は社会人で県外で働いています。そういう愛媛の学生だった人も残りつつ、今現在の学生は6人です。 やっぱり10代後半から20代前半ぐらいの構成。こういう若者の抱えてる問題みたいなところも、ちょっと焦点を当てて、人間関係を描いていきたいというところです。

―――今の稲葉さんの「劇団ど鍋」以外に持っているホームについて教えてください
稲葉:今は大学4年生で理学部です。化学をメインでやってるんですけど、化学の中でも無機化学の方を、メインでやっています。演劇とのつながりとしては技術的な側面で感じることが多くて。電子や分子の知識が「これをこうやったらこういう色が出そうだな」とか照明や舞台装置のワークで関係している感じです。
―――今回の作品・戯曲を上演しようとおもった理由について教えてください
稲葉:最初読んだときに「面白い」って率直に思ったんですよね。ちゃんとそれぞれの立場があって、同じ状況にたまたま押し込められちゃっただけっていう。 本当に舞台の基本みたいな。これまで、すごいひねくれたものをやることが多かったので、さっぱりしたものにもちょっと挑戦してみたいなと思ったのがきっかけです。
―――実際に今演出していて感じる事もありますか?
稲葉:そうですね。 2人ともお互いの立場に必死だなと思うんですよ。あと登場人物が30代の設定で、私は年代がちょっと違うっていうのもあって、社会人の人だからこその「自分の立場」とか「権力」「組織を守ろうとする意識」みたいなものが感じられるところが。いいなあという感じですね。
―――今まだ自分の年では感じてないことが、この戯曲の中でちょっと感じられる面白さ。みたいな感じでしょうか?
稲葉:そうですね。やっぱり私がまだ社会人をやっていないので、俳優の木村さんとか、安倍さんとかの知識や経験を頼りつつっていう感じです。
―――今回の上演作品「見上げる魚と目が合うか?」の見どころを教えてください。
稲葉:同じ30代の女性でも、それぞれの価値観、それぞれの人生があって経験値があるという所。大学に入って思うのは、大学4年間って自由だからこそ「経験値の差」がめっちゃ出るなと思うんです。本当にバイトしない人は、大学通って帰るだけの生活だし。バイトしてる人は、何個も掛け、持ちして遊びに行って、みたいな。人によって本当に人生、経験値は違っていて。

―――今回サマーフリンジに参加してくださった理由や目的みたいなことってありますか?
稲葉:本当に今、経験を積みたいので、お声がけいただけたら、できる限り参加したいなって思っているんです。いろんな演劇の祭典だったり、公演のお誘いみたいなものがあったら、できる限り断らずに飛び込んでいこうという精神で。
―――「経験を積みたい」っていうのは、演出家としてのという?
稲葉:演出家としてもそうですし、普通に個人的な人間としても。 大学4年生として、これから今度卒業後の自分像みたいなのを作り上げる上でも。やっぱり自主公演だけだと、自分たちの見たいものしか見れないし、お客さんも私たちのことを知っている方が多い。今回の四国サマーフリンジは、ちょっとこう世界を広げるみたいな部分もありますね。
―――四国の演劇が今後について願いや希望はありますか?
稲葉:学生の劇団もっと増えてほしい。大学はもちろん、高校生とかでもいいんですけど、愛媛でやってる子が少ないなと感じているので。
―――ある意味、競合が増えることになるのでは?
稲葉:ライバルが増えた方が張り合いでるなと!やっぱりライバル、もう少し欲しいです。お互いに知らないことを学び合える環境っていうのがあんまりないので。お互い切磋琢磨していくみたいなのが、もう少し愛媛県内でもできると嬉しいですね。
―――劇団員を募集したりはしているんですか?
稲葉:常に募集しています。DMを解放していて、いつでも問い合わせてもらえばと。年齢制限も特になくやっています。
―――これからの「劇団ど鍋」も、新たなメンバーや上演する演劇の作風、稲葉さん自身も含めて、これからどんどん変わっていきそうな予感がしますね。
稲葉:ウフフ、ほんとに、そうですね
「劇団ど鍋」の皆さん、稲葉さん、ありがとうございました。

取材・文:中村友惟
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四国サマーフリンジvol.2
2025年7月5日-6日開催
《C・Dプログラム》
7月5日18:00~ / 7月6日11:00~
劇団ど鍋『見上げる魚と目が合うか?』
作=原田ゆう/演出=稲葉香帆
出演=木村波音 安部優花
転職活動中に出会った二人の女性・梨絵と妙子が、面接開始まで待っている中、言葉を交わし、互いの過去や不安、希望を垣間見せながら距離を縮めていく。屋上に現れた謎の人物の存在をめぐる動揺が、彼女たちの内面と対話を際立たせる。
スタッフ|田畑匠輝 稲葉香帆 東朋生
【劇団ど鍋】
愛媛大学や松山大学の学生を中心に2023年に結成された劇団。日常の人間関係やその不可思議さをテーマに、独自の視点で苦悩を描いた作品を上演している。四国学生演劇祭にも参加し、地域で活動の幅を広げている。