片隅企画#2『壁–その前に広がる曠野 その果てにある都市–』

​片隅企画#2

原作=安部公房
上演台本・演出=大瀬戸正宗(片隅企画/サラダボール)


ああ、こいつはひろすぎる。ひろすぎて、ここにはもうひろさがない-

安部公房の芥川賞受賞作「壁−S・カルマ氏の犯罪」を大胆に再構成し、上演。

際限のない成長と発展を続ける現代社会のシステムに取り残された人間が向かうのは、

なにもない曠野なのか、自分の部屋なのか。
社会の、生活の、わたしたちの中でぽっかりと口をあける空洞。
その中にある“何か”を、安部公房のテキストをたよりに、喜劇的かつ不条理に、

あくまで曖昧に描こうとする挑戦作。


今回『壁』の 演出 をする 大瀬戸正宗 と申します。
ただの自己紹介ですが、この一文で、私の存在が明確に意味づけされています。
朝起きると名前を失っていたS・カルマ氏。フランツ・カフカの『変身』さながらの不条理的展開ですが、カルマ氏が他のものに変容してしまったわけではなく、カルマ氏への「意味づけ」そのものを背負い分離した彼の名刺が、カルマ氏として周りから認識され、生活を始めているのです。
この設定があまりにも秀逸で、現代社会の冷たさというか、空虚さを感じて惚れ込んでしまいました。自分って一体何をもって自分なんでしょうか。「意味づけ」を他者から与えられることによってしか自分というものを証明できないのでしょうか。安部公房作品のすごいところは、それらを悲劇的に描かず、ぼんやり抽象的に描くところだと私は思います。だからこそ今と重なるテーマを含んでいますし、現代の温度感を作品から肌感覚で感じ取れるのかもしれません。


今回戯曲化し上演する『壁–S・カルマ氏の犯罪』はファンタジー作品です。ファンタジーだからこそ、そこに反転して映し出された現代社会はよりグロテスクに見えます。平均25歳以下の私たちがファンタジーの裏にある現代社会をどう舞台に映すのか、片隅企画にとって大きな挑戦作となりそうです。
感想のようになってしまいましたが、ご来場のお客様に良い作品をお届けできるよう頑張っています。ご来場お待ちしております。

演出 大瀬戸正宗


《あらすじ》
ある朝、男は自分の名前を失ってしまう。名前は名刺そのものとなって分離し、男の社会的な地位までも全て奪い去り、その男としての生活を始めていた。自らの帰属すべき場所を無くした男の目には、現実世界が奇怪なものに映り、男の胸は穴が空いたようにからっぽになっていた。やがて胸の穴は激しく何かを求めはじめ、ついには写真の中の曠野風景を吸収してしまう。男の胸の中の曠野は、高層ビルがそびえ立つ都市とは対照的に、遮るものが何もなく、永遠に続くような地平線があるのみであった。

安部公房 Kobo Abe
(1924-1993)東京生れ。東京大学医学部卒。1951(昭和26)年「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992(平成4)年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。
新潮社HPより https://www.shinchosha.co.jp/book/112102/


出演

黒木麻絢 小林明葉(片隅企画) 椙田航平 福島優菜(片隅企画/アルヒツト) 堀慎太郎

日時

[広島公演]
2024.
1.20.Sat 13:00★ / 19:00★

1.21.Sun 15:00
※受付開始・開場は開演の30分前です。
★=終演後に大瀬戸・出演者とゲストによるアフタートーク有

トークゲスト

1月20日 13:00/永山智行(劇作家・演出家・劇団こふく劇場代表)
1月20日 19:00/本坊由華子(世界劇団代表)

[香川公演]
2024.
3.9.Sat 14:00★
3.10.Sun 11:00
※受付開始・開場は開演の30分前です。
※上演時間は120分を予定しております。
★=終演後に大瀬戸・出演者とゲストによるアフタートーク有

トークゲスト

3月9日 14:00/尾場瀬一郎(社会学者・四国学院大学教授)

会場

[広島公演]
山小屋シアター(広島県広島市西区横川町3−12–3アンゴラビル 3F)

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